東京都調布市におけるタバコ対策の取組みをご紹介します。

調布市タバコ対策推進協議会――多様な立場で建設的に話し合う場

調布市のタバコ対策を支えている大きな特徴の一つが、「調布市タバコ対策推進協議会」の存在です。この協議会は、調布市、医師会、歯科医師会、薬剤師会、市内の国立大学、市内の有名企業、そしてちょうふタバコ対策ネットワークなどが定期的に集まり、調布市のタバコ対策について建設的に意見交換・協議する場です。

受動喫煙対策は、行政だけ、医療者だけ、市民団体だけで進められるものではありません。子どもを守る視点、地域の事業者の現場感覚、医療専門職の知見、大学や企業の協力、市民の声を持ち寄ることで、より実効性のある取り組みにつながります。

喫煙者も非喫煙者もタバコの害から守るために、関係者が同じ方向を向いて話し合う。調布市の取り組みが継続的に前進している背景には、このような顔の見える協議の場があります。

調布市受動喫煙防止条例――誰もが健康に暮らせるまちへ

調布市では、2019年3月に「調布市受動喫煙防止条例」が成立し、同年7月から施行されました。

この条例の大きな特徴は、単なる環境美化やマナー向上ではなく、「受動喫煙を防ぎ、誰もが健康に暮らせるまちをつくる」ことを目的としている点です。学校等の教育施設周辺の路上禁煙、通学路での禁煙への努力義務、市内すべての公園の敷地内禁煙など、子どもや市民の生活に近い場所を守る内容が盛り込まれています。

吸う人も吸わない人も、タバコの煙による健康被害を地域全体で減らしていく。調布市の受動喫煙対策は、その考え方を条例として具体化した、全国的にも先進的な取り組みです。

市職員の就業時間中禁煙――市役所から始める受動喫煙対策

調布市では、2014年頃から市職員の就業時間中の喫煙を禁止する取り組みが始まりました。

当時は、他自治体で職員の喫煙時間に関する住民監査請求が話題となり、勤務時間中の喫煙をどう考えるかが全国的にも注目されていました。調布市でも、市民から職員の喫煙状況に関する声が寄せられる中で、市民から信頼される市役所であるために、就業時間中は喫煙しないという方針が取られました。

これは職員個人を責めるためのものではなく、公務中の公平性、市民への説明責任、そして受動喫煙防止を両立させるための判断です。

市役所自身が率先して取り組むことで、地域全体の受動喫煙対策にも説得力が生まれました。

姉妹都市宿泊助成対象施設の禁煙化――旅先でも子どもを煙から守る

調布市では、姉妹都市などへの宿泊助成の対象となる施設についても、受動喫煙防止の観点から改善が進められてきました。

2017年頃からは、まず宿泊施設の喫煙・禁煙の実態を市民に分かる形で掲載することから始まり、その後、市が関係先に働きかけることで、徐々に禁煙化が進んでいきました。旅行や校外活動、家族での宿泊は、子どもにとって楽しい思い出になる大切な機会です。その場でタバコの煙に悩まされないようにすることは、安心して出かけられる環境づくりにつながります。

市民、とくに子どもを受動喫煙から守るという視点を、市内だけでなく市外の宿泊先にまで広げた点に、調布市らしい丁寧な姿勢が表れています。

調布市花火大会の全面禁煙――多くの人が集まる場を安心できる空間に

調布市花火大会は、例年多くの来場者でにぎわう、市を代表する大きなイベントです。

来場者数は例年約30万人とされており、そのような大規模イベントでは、会場内の喫煙が周囲の人、とくに子ども、妊婦、呼吸器疾患のある人などに影響を及ぼす可能性があります。

そこで調布市では、花火大会の全面禁煙に取り組んできました。人が密集するイベントでは、喫煙場所を分けるだけでは煙の流れを完全に防ぐことは難しく、全面禁煙にすることで初めて、多くの人が安心して楽しめる環境に近づきます。

楽しいイベントだからこそ、誰かが我慢するのではなく、みんなが気持ちよく過ごせるようにする。花火大会の禁煙化は、その考え方を分かりやすく示す取り組みです。

受動喫煙ゼロの店登録事業――規制ではなく、お店を応援する仕組み

2018年に始まった「調布市受動喫煙ゼロの店登録事業」は、受動喫煙のない飲食店等を市が登録し、市民に紹介する取り組みです。

この事業の大きな特徴は、規制で締めつけるのではなく、安心して利用できるお店を応援する仕組みであることです。

登録にあたっては、紙巻きタバコだけでなく、加熱式タバコも不可、喫煙室も不可、店先の灰皿も不可とされ、店内外を含めて受動喫煙を生じさせないことが重視されています。

禁煙のお店を選びたい市民にとっては分かりやすく、禁煙に取り組むお店にとっては市からの後押しになります。市民の健康を守りながら、地域のお店の魅力も高めていく、調布市らしい前向きな制度です。

通学路表示を「文」から禁煙マークへ――子どもを守るメッセージを見える化

2019年頃から、調布市では電柱に掲示されている通学路の表示を、従来の「文」のマークから、禁煙を示すマークへと変更する取り組みが進められました。

通学路は、子どもたちが毎日歩く生活の場です。そこに禁煙マークが掲示されることで、大人に対して「ここは子どもが通る道です。タバコの煙に配慮しましょう」というメッセージが自然に伝わります。

看板や表示は、強い言葉で注意するだけが役割ではありません。地域の人が無理なく気づき、行動を変えるきっかけにもなります。通学路表示の変更は、条例の趣旨をまちの中で分かりやすく伝え、子どもを受動喫煙から守る意識を日常の風景に根づかせる取り組みです。

受動喫煙防止啓発チラシの全戸配布――市民全体に届く情報発信

調布市では、2021年度から毎年、受動喫煙防止に関する啓発チラシを市内全戸に配布しています。

市民約24万人、約12万世帯に情報を届ける取り組みであり、関心のある人だけに届く広報ではなく、地域全体で受動喫煙について考えるきっかけをつくるものです。

2025年のチラシでは、配布後1週間で関連ウェブページへのアクセスが5000件を超え、市のページの中でも高い注目を集めたとされています。これは、紙のチラシとウェブページを組み合わせることで、市民の行動につながる啓発ができることを示しています。

議会や市民からも良い反応があったとされ、調布市の受動喫煙対策が、市民に届く形で広がっていることが分かります。

中学生の職場体験先にも受動喫煙防止の条件――学びの場を安全に

調布市では、2022年頃から、中学生の職場体験事業の受入先についても、受動喫煙防止への協力を求める取り組みが行われています。

職場体験は、中学生が地域の事業所で働くことの意味を学び、社会とのつながりを感じる大切な機会です。その一方で、体験先でタバコの煙にさらされることがあっては、安心して学ぶ環境とはいえません。

調布市の募集要項では、禁煙席と喫煙席を分けるだけでは完全に受動喫煙を防げないこと、屋外の喫煙場所から煙が屋内に流れ込むことがあることなども示され、受入事業所に理解と協力を求めています。

子どもたちの学びを支える地域の事業所とともに、安全で健康的な職場体験をつくっていく取り組みです。

禁煙プレートの無料配布――市民が自分の場所を守るために

2023年には、希望する市民に対して、禁煙プレートを無料で配布する取り組みが行われています。

プレートには「ここでタバコを吸わないでください」といった分かりやすい表示がされ、紙巻きタバコだけでなく加熱式タバコにも配慮した内容となっています。

近隣の路上喫煙や建物周辺での喫煙に困っていても、個人で注意することは心理的な負担が大きく、トラブルを心配する人も少なくありません。市が作成したプレートを掲示できることは、市民にとって大きな安心材料になります。

強く対立するのではなく、穏やかに意思表示をし、周囲に配慮を促す。禁煙プレートの配布は、市民一人ひとりが受動喫煙を防ぐ行動を取りやすくする、実用的な支援策です。

市内工事業者への啓発物配布――現場で起きる路上喫煙にも丁寧に対応

2024年からは、市内で工事を行う事業者に対して、受動喫煙防止や喫煙ルールを伝える啓発物の配布が行われています。

道路工事や建築工事では、市外から来る作業員も多く、地域の喫煙ルールを知らないまま路上喫煙をしてしまうことがあります。そこで調布市では、道路工事の使用・許可の際などに、工事関係者へ喫煙ルールを周知する取り組みを進めています。

事前に分かりやすく伝えることで、不要なトラブルや市民からの苦情を防ぐことができます。地域住民、通行人、工事関係者の双方にとって気持ちよく安全な環境をつくるための、現場に即した実践的な受動喫煙対策です。

子どもの食の支援は全面禁煙店で――食事の場を安心できる場所に

2025年頃から、調布市では、子どもの食を支援する取り組みに参加できる店舗について、全面禁煙であることを条件とする方向で整理が進められました。

子ども食堂やフードリボンのような食の支援は、子どもたちに温かい食事と地域とのつながりを届ける大切な活動です。だからこそ、その場所がタバコの煙の心配なく過ごせる環境であることは、とても重要です。食事を提供する場で受動喫煙が生じてしまえば、せっかくの支援が子どもの健康リスクと隣り合わせになってしまいます。

調布市では、参加店や補助対象について全面禁煙を求めることで、子どもたちが安心して利用できる仕組みを整えています。福祉と健康づくりを一体で考えた、きめ細かな取り組みです。

市が後援するイベントにも受動喫煙対策――お祭りを誰もが楽しめる場に

2026年頃から、調布市が「後援」するイベントやお祭りについて、受動喫煙防止対策に努めることが条件に加えられました。

市有地や教育機関で行われるイベントは、すでに敷地内禁煙の考え方が浸透しています。一方で、民有地や寺社仏閣などで行われる地域のお祭りでは、必ずしも同じ水準の受動喫煙対策が取られているとは限りません。

地域のお祭りは、子どもから高齢者まで多くの人が集まる大切な交流の場です。市の後援を受けるイベントで受動喫煙対策を求めることは、参加者の健康を守り、誰もが安心して楽しめる場づくりにつながります。楽しい場面だからこそ、タバコの煙で誰かが参加をためらうことのないようにする、前向きなルールです。

小学生へのタバコ問題啓発クリアファイル配布――子どもに届く防煙教育

2026年から、調布市では市立小学校の児童に向けて、タバコ問題を啓発するクリアファイルの配布が行われています。

子どもにタバコの問題を伝えるときには、単に「危ない」と言うだけではなく、受動喫煙、加熱式タバコ、シーシャなど、身近に広がりつつある問題を、年齢に応じて分かりやすく伝えることが大切です。

クリアファイルは、授業や家庭で使われる身近な文具であり、子どもが日常の中で繰り返し目にすることができます。学校で学んだことが家庭での会話につながれば、子どもだけでなく保護者や地域にも啓発が広がります。

調布市の取り組みは、子どもたち自身が自分の健康を守る力を育てるとともに、地域全体の理解を深めるきっかけにもなっています。

近隣受動喫煙対策を盛り込んだ先進的条例――自分の敷地内でも周囲に配慮する考え方

2026年4月、調布市で制定された「映画のまち調布推進地区内における建築物の制限の緩和等に関する条例」の中に、近隣受動喫煙対策として重要な規定が盛り込まれました。屋外喫煙所を設ける場合、敷地境界から7メートル以上離すことを求める内容です。

これは、民有地の中であっても、タバコの煙が周囲に流れ込む可能性がある場合には、近隣への配慮をルールとして明確にするものです。背景には、映画のまちづくりを進めるための用途規制緩和と、周辺環境を守る必要性があります。住民から寄せられた「タバコの煙が周囲に影響する」という声を、市が受動喫煙防止施策として受け止めた点にも大きな意味があります。自

分の敷地内でも周囲の健康に配慮するという考え方は、今後の近隣受動喫煙対策のモデルになる可能性があります。

当サイトでの詳細な紹介はこちら→ 2026年4月、近隣受動喫煙対策を盛り込んだ先進的条例が調布市で新たに定められました

健康寿命をのばそう!アワード受賞――協働による取組が全国的に評価

調布市のタバコ対策は、国からも高く評価されています。

2023年11月、調布市の取組「誰もが健康に暮らせるまち調布を目指す―関係団体と連携しタバコの煙から市民を守る―」が、厚生労働省及びスポーツ庁が主催する「第12回健康寿命をのばそう!アワード」において、厚生労働省 健康・生活衛生局長 優良賞を受賞しました。この受賞では、調布市が単独で施策を進めるのではなく、調布市医師会、調布市歯科医師会、調布市薬剤師会、ちょうふタバコ対策ネットワークなどの関係団体と連携し、受動喫煙防止や啓発、子どもを守る活動を継続してきたことが評価されています。

喫煙者を責めるのではなく、喫煙者も非喫煙者もタバコの害から守るために、行政、医療専門職、市民団体が同じ方向を向いて取り組む。調布市の受賞は、地域ぐるみの協働が実効性ある健康づくりにつながることを示す、うれしい成果です。


上記のほか、福祉まつりでの啓発や、教育機関での防煙授業など、さまざまな地道な活動を力を合わせて実施しています。